秀洋生のWEB三味線講座
こんにちは、秀洋生会会主の秀洋生です。
お待たせしました! いよいよ、三味線講座の始まりです。
ここでは、藤本流三味線の「いろは」の「い」を図解をあわせて説明します。
1.三味線に関する知識
(1) 三味線の構造
三本の糸(弦)の中で一番太い「一の糸」だけが上の駒がなく、棹(さお)の上部に直接触れています。
これによって、弾かれた音とは別の音が発生し、両者が共鳴して一種のうなり音を発します。
これを「さわり」と呼び、三味線の豊かな表現を可能にしています。
断面図です。三味線の棹(さお)は胴(どう)を貫いて、糸(弦のこと)を留める根緒(ねお)まで続いていて、これが三味線の大きな特徴です。
棹は3つに分解できます。また胴の内側に綾杉(あやすぎ)という細かい彫りを施すと音色が良くなるといわれています。
(2) 三味線の種類
流儀と用途によって違ってきます。
細棹 : 長唄に使用されています。
中棹 : 地唄、小唄、常盤津、清元、新内
太棹 : 義太夫などに使用されてます。
民謡、俗曲などに使用する三味線は中棹であり、民謡などの場合は調子を高く唄う人が多いため、棹の長さを普通寸法より三寸迄短くして使用(通称 短棹(たんざお))される場合もあります。
(3) 三味線の材料
材料の木材は堅く、狂いが少なく、また見た目にも美しくなければなりません。現在、下記の三種類が主な材料です。
花林材
一般的お稽古用三味線。全ての三味線の胴の材料。
紫檀材
中級クラス三味線。日本産。現在、入手及び製造不可。
紅木材
舞台用、高級三味線。密度が高く、水に浮かばない。
木目とは異なる、「トチ」という紋様と相まって、美しく、非常に音がよい。現在の三味線の主流。
入手が非常に困難。
(4) 胴の材料
三味線の胴は、一般的に花林という木で作られます。
また、木をくり抜き加工して作られる太鼓の胴とは異なり、木材の美しい木目をそのまま生かすよう、四枚の板状に削り出したものを接着剤などで貼り合わせてあります。
そして、表面に漆をかけ、磨きます。
この三味線の胴は一丁の棹に対して、角孔と丸孔を空けて仕込みます。
通常、三味線の表裏の皮が互いに引っ張り合っているので、一度でも、どちらか片方に皮を張ってしまうと、その時点で太鼓が狂い出すので、常に皮を張っておかなければなりません。
(5) 皮の材料
三味線の皮の種類は、現在多様化している。厚さ張り具合で音色が変わります。
(6) 糸巻きの材料
青黒檀材
木材の中では硬い素材と滑らかな木あじから、象牙に次ぐ高級品。
この木を芯に表面を三味線と同材の紅木材を加工して張り合わせて作った、紅木張りと言うものもある。
削り粉が青みがかっているので、こう呼ぶ。
黒檀材
硬く、値段も手頃なことから、主に普及品以上のものに用いられる。
縞黒檀材
独特の木目を持ち、物によってはとても美しい。ただ、他の材料に比べて木が柔らかいため、頻繁に削り直し(合わせ直し)が必要。お稽古用などに使用。
その他
最近では上記以外に、舞台での演出効果を狙った透明なアクリル製、象牙調プラスチック、セラミック製なども使用されるようになった。
(7) 糸の材料
糸は一般的には絹糸で出来た物を使用します。最近は練習用に切れづらい、ナイロンやテトロン糸も使いますが、音は良くありません。
秀洋生会では、3の糸(一番細い糸)は切れ易いためナイロンを使用します。但し、昇格試験や本部の発表会には絹糸を使用します。
(8) 駒の材料
皮と糸の間に挟んで使用します。その材質は様々な素材で出来ている。またその材質で音質が変わります。
寸法は、3分3厘を使用します。
(9) 撥の材料
小唄を除き、ほぼ全てのジャンルでバチというものを用いて演奏します。
大きさや、重さも様々で、その人の手に応じたバチを使う場合と、流派によって決められている場合もある。
また、材質も様々です。
秀洋生会では、藤本会専用のプラスチックの撥を使用します。
サイズは35~45を使用、手の大きさで決定します。
(10) 糸の結び方
3本の糸を新しくかける場合、通常2の糸から、3,1と掛けます。掛方は図の通りです。
①根緒に結び、糸がからまないように糸の輪の中に左手を入れて、糸をほどきます。
②糸の端を左手に一回巻き、糸の巻いていた形がなくなる程度力を入れて一度伸ばします。
③糸巻きに糸を巻きます。
2.楽譜(文化譜)に関する知識
(1) 譜表
譜表とは音を表す線をいいます。三本の線の上に、音の高さと、長さ及び簡単な演奏方法を記したものです。
(2) 符
符とは、音の高さと長さを表すもので、音の高さは数字によって表されその数値の大きいほど、高い音になります。
開放絃(左指は糸を何も押さないで右手の撥のみで弾くこと)を0(ゼロ)とし、その糸の中では一番低い音となる。
よって、絃が違えば数値が同じであっても、音の高さは違う。音の長さは、それぞれ示された音(数字)の下に短い線を引いて表します。
その長さを、五線譜に用いられる符と表すと次の通りとなります。
(音は開放音の0で示します)
(3) 休符
休符とは、三味線を弾かない長さを示します。文化譜の場合は黒点とその下に書き込まれる線によって表します。
(4) 拍子
音楽には強い拍子とそれに反する弱い拍子があり、それが交互にある場合、強弱、強弱となります。
これを2拍子といい、強弱弱、となる場合は3拍子という。
西洋音楽は、この拍子が整然としているが、純日本音楽の場合は、詞そのものが拍子となったり、旋律が
1つの大きな拍子となることが多いので、強弱による拍子の分け方は妥当と言えないが、表示の便利さから
ほとんどの場合2拍を1つの区切りとして表される。
この2拍づつに区切った1つを1小節という。
(5) 記号と意味
一般的に使用されるものは以上であるが、特殊な技巧を必要とするときは、その都度書き込まれる。
3.口三味線に関する知識
(1) 口三味線
口三味線とは、三味線で演奏される音を、言葉と声にして称呼することです。
・放した音-弾き-(3の糸=テン),(2の糸=トン),(1の糸=ドン)
・放した音-スクイ・ハジキ-(3の糸=レン),(2の糸=レン・ロン),(1の糸=ロン)
・押えた音-弾き-(3の糸=チン),(2の糸=ツン),(1の糸=ツン)
・押えた音-スクイ・ハジキ-(3の糸=リン・ラン),(2の糸=ルン),(1の糸=ルン)
・2本同時の音-弾き-(3の糸=シャン),(2の糸=ジャン・シャン),(1の糸=ジャン)
・2本同時の音-スクイ・ハジキ-(3の糸=チャン),(2の糸=ジャン),(1の糸=ジャン)
これによって、押えた音、放した音、スクイ、ハジキなどに違いが分かる。
次は休みの長さの称呼を示します。
4.調子に関する知識
(1) 調子とは
調子とは、三味線において三本の糸の組合せをいう。
(2) 調子の種類
主に用いられる調子は次の通りです。
本調子 : 演奏される曲は上品で静かな感じを出します。
二上り : 演奏される曲はにぎやか、はなやかさを出します。
三下り : 演奏される曲はしっとりとした感じでわびしさを出します。
(3) 調子と音程
(4) 調子の高さ
同じ曲であっても、唄う人の声の高さによって調子を高くしたり、低くしたりします。
これが「調子の高さ」であり、三味線では「本数」によって表します。
本数は、1本から12本まであり、数字の多いもの程高い調子になる。
5.弾き方に関する知識
(1) 構え方
①胴は右足の付け根と膝の中簡に置きます。
②右腕は、胴の中間くらいに乗せます。
③三味線の傾きは天神が目線の高さで、胴を上から見たとき三本の糸が一本に見えるのが一番良い姿勢です。
(2) 撥の持ち方
小指と薬指で才尻をしっかりと握り、親指を「開き」の部分から計って2.5cmから3cm位のところに当てます。
小指、薬指、親指で撥を固定させます。
中指と人差し指は撥に添える程度にし、皮に当てる時全部の指に力を入れます。また、手首は充分曲げます。
(3) 撥の当て方
撥皮の部分に撥を当てます。撥が当って止まったときの形が、撥先きの開きの部分が糸に対して直角になるように当てます。
(4) 糸のおさえ方
三味線の糸は爪で押えます。爪といっても爪の背が当たるくらいまで曲げた形が良い。爪は短く切ります。できれば、人差し指の爪のみに「糸道」(爪先中央に糸がはまるようにすじを入れる)をつける。 「糸道」の付け方は、爪先を二の糸で削るように擦る。
(5) ツボ(勘所)
ツボとは音を出す位置で、文化譜では数字で表します。各ツボの音を覚えると上達が早いです。
三味線は吹奏楽器などと違い音の出るのは、撥が糸に当たった瞬間が最大で、すぐに消えてしまいます。
また指を離せば完全に余韻もなくなってしまいます。